国内FX業者(店頭FX・くりっく365)で個人が得た利益にかかる税金を整理したリファレンス。税率と種類、1月〜12月の課税期間と1年のフロー、損益通算・繰越控除・経費、そして節税(ふるさと納税ほか)までを一次ソース付きでまとめています。会社員の申告要否は§07にフローチャートを用意。海外FX業者やプロップファームは課税の仕組みが異なるため、同じく§07に注意点として分けました。
個人用にまとめた資料で、税務アドバイスではありません。税制は改正され、個々の事情で扱いも変わります。実際の申告前には各項の一次ソース(国税庁ほか)と、必要に応じて税務署・税理士で必ず確認してください。前提は日本の居住者・個人・国内FX業者です。
国内FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として、給与などとは分けて計算する申告分離課税になります。店頭FXも取引所FX(くりっく365)も、2012年以降はこの区分に一本化されています。税率は利益の大小にかかわらず一律20.315%です(累進ではありません)。
令和8年度税制改正で防衛特別所得税が新設されます。2027年以降は付加税の内訳が「復興特別所得税0.165%+防衛特別所得税0.15%」に組み替わりますが、合計の税率20.315%は当面据え置きです(復興特別所得税は税率を下げる代わりに課税期間が2047年まで延長)。
課税されるのはその年に決済して確定した損益です。ポジションを持ち越しているだけの含み益は課税対象外。スワップポイントも課税対象ですが、受取・決済のどちらで認識するか(=いつの年の損益に入るか)は業者によって扱いが異なるため、年をまたぐときは自分の口座の年間損益報告書で確認してください。
課税期間は暦年(1月1日〜12月31日)。その1年の損益を、翌年の確定申告でまとめて申告・納税します。
※ 申告期限(3/15)が土日にあたる年は翌開庁日にずれます。損失の年に確定申告しておくと、翌年以降の繰越控除(→§04)の起点になります。所得税の確定申告をしない場合は住民税が自動連携されないため、別途市区町村への住民税申告が要ることがあります(→§07 会社員フロー)。
損益通算とは、利益と損失を相殺して課税対象を圧縮すること。国内FXの損益は「先物取引に係る雑所得等」という同じ区分の中でだけ通算できます。区分が違うもの(株式や給与)とは通算できないのがポイントです。
| 相手 | 通算 | 補足 |
|---|---|---|
| 通算できる(=同じ「先物取引に係る雑所得等」) | ||
| 他の国内FX・くりっく365 | できる | 業者をまたいでも同じ区分。A社の利益とB社の損失を相殺できる |
| CFD(店頭・取引所) | できる | 株価指数・商品・個別株CFD等。申告分離の対象商品であること |
| 商品先物・日経225先物/オプション等 | できる | 取引所の先物・オプションでこの特例の対象になるもの |
| 通算できない(=別区分) | ||
| 給与・事業などの総合課税所得 | できない | 申告分離のため、給与や他の雑所得(総合)とは相殺不可 |
| 上場株式・投資信託の譲渡損益・配当 | できない | これも申告分離だが「別枠」。FX損失と株の利益は相殺できない |
| 海外FX業者の損益 | できない | 海外FXは総合課税の雑所得(→§07)。国内FXとは通算不可 |
※ 「先物取引に係る雑所得等」に含まれる具体的な取引の範囲は国税庁 No.1521で確認を(→§08)。
その年に控除しきれなかった損失は、確定申告することで翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の「先物取引に係る雑所得等」の利益から差し引けます。大きく負けた年ほど、翌年以降のために申告しておく価値があります。
繰越控除には、①損失が出た年に確定申告することに加え、②その後の年も連続して確定申告書(付表つき)を提出し続けることが必要です。途中の年に取引が無く損益ゼロでも、申告を1年でも飛ばすとそこで繰越が切れます。控除を受ける年にも付表・明細書を添付します。
たとえば2026年に −60万円の損失を出し、確定申告して繰り越した場合:
経費計上は法人だけの話ではなく、会社員を含む個人でもできます。そもそもFXの「所得」は利益(年間の確定損益)− 必要経費で計算し、この所得が課税や申告要否(→§07)のベースになります。経費にできるのは、取引のために直接かかった費用で、取引との関連性を説明でき、領収書等で裏づけられるもの。私用と兼用のもの(PC・通信費など)は取引に使った割合で按分します。最終的に認められる範囲は税務署の判断になります。
※ 領収書・明細は保存が必要。按分の根拠(使用時間・面積など)をメモしておくと説明しやすい。
FXは税率が一律で、株のNISAのような非課税枠もありません。使える手立ては限られますが、組み合わせれば効きます。まずは§03 損益通算・§04 繰越控除・§05 経費で課税対象を正しく圧縮するのが土台。その上で以下が加わります。
「ふるさと納税はワンストップ特例で済ませた」つもりでも、FXの利益で確定申告をするとワンストップ特例は無効になります。確定申告のなかで改めて全額を寄附金控除として申告し直す必要があるので、申告漏れに注意。
給与1か所・年末調整済みの会社員が、FXの利益に応じて何をすべきかの早見フローです。20万円の基準は経費を引いた後の「所得」で判定し(→§05)、所得税の確定申告をすれば住民税は自動で連携されます。自分で住民税を申告するのは「確定申告をしない × 利益あり」のときだけ、と読んでください。
※ 所得税の申告を省く場合でも、経費の領収書・計算根拠は「20万円以下だった」裏づけとして保管を。「20万円以下は申告不要」はあくまで所得税だけの特例で、住民税には無い点に注意(Q3)。
給与がない専業トレーダーや被扶養者は、基礎控除(合計所得48万円)などを超える所得があれば確定申告が必要になり得ます。とくに扶養に入っている場合、FXの利益(合計所得)が一定額を超えると扶養から外れる(配偶者控除・扶養控除や社会保険の判定に影響する)ため、利益が伸びた年は境界に注意してください。
海外FX業者の損益は申告分離ではなく総合課税の雑所得で、給与などと合算して累進課税(所得税+住民税で最大約55%)。さらに損益通算(§03)も繰越控除(§04)も対象外で、国内FXの損益とも通算できません。同じ「FX」でも税負担がまったく違うため、国内・海外は必ず分けて扱ってください。
審査・チャレンジに合格して資金を借り、成績に応じた利益配分(ペイアウト)を受け取るプロップファームの収入は、自分の資金・自分名義のポジションで市場取引した利益ではない点が国内FXと決定的に違います。実態は「成績に応じた報酬の受け取り」に近く、この場合は「先物取引に係る雑所得等」ではなく総合課税の雑所得として扱われる可能性が高いと考えられます(=海外FXと同様に累進・通算不可の側)。
総合課税の雑所得なら、給与などと合算して累進課税(最大約55%)、損益通算(§03)・繰越控除(§04)の対象外で、国内FXの損益とも通算できません。ただしプロップファーム収入には国税庁の専用見解がなく、契約形態(デモ/実口座・業務委託か否か)や規模によって結論が変わり得ます(継続・大規模なら事業所得の余地、海外拠点なら送金・為替換算の論点も)。金額が大きい・継続的なら、申告方法は税理士に確認してください。なおチャレンジ参加費などの費用は、対応する収入がある範囲で雑所得の必要経費になり得ます。